AWS を使用して医薬品候補探索コストの 99% 削減を実現した Insilico

2022 年

医薬品開発プロセスは、緊急であると同時に、長い時間と労力を要するプロセスです。2010 年の時点で、単一の医薬品を標的仮説から候補検証に進めるには、平均 4 年半の期間と、平均 6 億 7,400 万 USD のコストがかかっており、これらの数値は過去 10 年間で着実に上昇しています。すべての段階で専門知識が必要となるユニークな課題が発生するため、このプロセスが断片化され、非効率的になることもあります。

バイオ医薬品企業とバイオテクノロジー企業がその創薬と開発パイプラインを合理化して迅速化できるように、Insilico Medicine は、標的特定、分子設計、およびリード最適化を支援するための堅牢な一連の機械学習 (ML) 駆動のツールを開発しました。

Amazon Web Services (AWS) 上で構築された Insilico の創薬エンジンは、同社のポートフォリオの中核となっています。このエンジンは、何百万ものデータサンプルと複数のデータ型を使用して、疾患バイオマーカーの発見、最も有望な標的の特定、および標的に固有の新規低分子モジュレータの設計を行います。Insilico は、高度な人口知能 (AI) と ML 機能を重ね合わせてこれらの分析を実行し、製薬研究と開発のプロセスにおける全段階をサポートします。

Insilico は、一連の Software-as-a-Service (SaaS) プラットフォームを通じて、製薬業界が幅広くアクセスできる ML 駆動のツールを開発しています。これには、有望な創薬標的の高速な特定のための PandaOmics と、実験データ、ML アルゴリズム、および新規化合物を設計して最適化するための物理学ベースの手法を活用する Chemistry42 が含まれます。同社は、独自の内部医薬品パイプラインを使用してこれらのプラットフォームを検証して、明確なコストと時間の削減を実証しています。

Chemistry42 を担当する Insilico のグローバルビジネスデベロップメントディレクターである Petrina Kamya 博士は、「AWS で構築された PandaOmics と Chemistry42 プラットフォームを使用することにより、線維症医薬品候補を、わずか 260 万 USD で 18 か月未満のうちに標的探索から化合物検証に進めることができました」と話しています。

AWS Healthcare & Life Sciences Virtual Symposium 2021: Insilico
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AWS で構築された PandaOmics と Chemistry42 プラットフォームを使用することにより、線維症医薬品候補を、わずか 260 万 USD で 18 か月未満のうちに標的探索から化合物検証に進めることができました。”

Petrina Kamya 博士
Chemistry42 担当グローバルビジネスデベロップメントディレクター

 

 

医薬品パイプラインのすべての段階で ML を安価にし、グローバルなアクセス可能にする AWS

Insilico のプラットフォームが処理する実験データと体系的データの量のため、これらには極めて高度なグラフィック処理ユニット (GPU) 要件があります。Insilico は AWS と連携して、オンデマンドで利用できる、必要な柔軟性とスケーラビリティを見いだしました。PandaOmics と Chemistry42 はどちらも、セキュアでサイズ変更が可能なコンピューティング容量をクラウドで提供するウェブサービス、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) で実行されています。

「AWS は、必要なコンピューティング能力にアクセスできるようにしてくれます」と話すのは、Insilico の最高執行責任者である Qingsong Zhu 博士です。「スタートアップ企業として、オンプレミスで大規模なコンピューティングクラスターを独自に維持する必要なく、強力なサーバーにアクセスできることが重要です」。

香港に本社を構える Insilico は、世界中に 150 人の共同研究者を抱えています。その結果、プラットフォームアーキテクチャはスケーラブルで簡単にアクセスできる必要がありました。Insilico は、オブジェクトストレージサービスである Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) を使用し、関連データをクラウドでホストすることによって、これを実現しました。「スタートアップ企業ではあるものの、当社にはグローバルなチームがあります。AWS は、サーバーをどこに設置するかを心配することなく、チームをグローバルにコーディネートすることを可能にしてくれました」と Zhu 博士は話しています。

Kamya 博士は、「AWS を使用することで、ビジネスを簡単にスケールアップし、国際間でのコラボレーションを促進することができました」と付け加えています。この協調的な要素は、SARS-CoV-2 の治療を目的とするリード化合物の設計が関与した、同社の COVID-19 プロジェクトで特に役立ちました。これらの化合物は現在、Insilico が新薬臨床試験開始申請 (IND) を米国食品医薬品局 (FDA) に提出することを可能にする研究にもう少しで手が届く状態にあります。

接続され、合理化された医薬品業界を目指して

Insilico の各プラットフォームは、医薬品開発プロセスの特定の箇所を迅速化しますが、それらが相互接続されると、ボトルネックを排除することで時間をさらに節約できます。プラットフォームの使いやすさは、高度なバイオインフォマティクスに誰もがアクセスできるようにするため、さまざまな関係者が同じツールを使用して分析を調整することが容易になります。

Kamya 博士はこのように話しています。「生物学者ならば、バイオインフォマティクスの実施を躊躇するべきではありません。化学者ならば、計算ツールの使用を躊躇するべきではありません。Insilico では、明快で使用が簡単なプラットフォームを作成して、科学的な経歴を問わず、信頼できる成果を提供することが重要でした。私たちは、創薬のために誰もが AI を使用できるようにして、医薬品業界の異なる部門間における相互運用性を向上させたいと考えています」。

将来的に、Insilico Medicine は医薬品の研究開発プロセスにおける後半段階への関与を深めていくことを計画しています。Insilico は、成長を可能にし、AI の可能性を最大限に引き出すためにさらに多くの AWS ツールを組み込んで、医薬品業界に革命をもたらすことを目標としています。

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AWS が他のバイオ医薬品およびライフサイエンス企業と連携して、発見とイノベーションを推進する方法をご覧ください。


Insilico Medicine について

Insilico Medicine は、創薬のための AI プラットフォームを開発した小規模なバイオテクノロジースタートアップ企業です。同社は、機械学習、バイオインフォマティクス、および化学に関する専門知識を組み合わせて、医薬品開発におけるさまざまな段階でコストと時間を削減しています。

AWS のメリット

  • 医薬品パイプラインからボトルネックを排除
  • 医薬品開発プロセスの期間を平均と比較して 3 年間短縮
  • 平均的な創薬コストを 6 億 5,000 万 USD 以上削減
  • 医薬品業界におけるさまざまな関係者間のつながりを育成
  • 誰もが計算ツールにアクセスできるようにする  

使用されている AWS のサービス

Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。デベロッパーがウェブスケールのクラウドコンピューティングを簡単に利用できるように設計されています。

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Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。


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